オオクニヌシ(大国主)は、出雲大社の御祭神として祀られている神様です。古事記や日本書紀など、数多くの神話に登場し、日本の神様のなかでもトップクラスの人気を誇っています。
この記事では、オオクニヌシがどのような神様なのか、物語やご利益など、様々な観点から解説させていただきます。
オオクニヌシとは?
オオクニヌシ(大国主)は、スサノオノミコト(素戔嗚尊)の子孫にあたり、日本神話に登場する国津神(地上に現れた神様の総称)の一柱。数多くの神話に登場し、その都度、異なる活躍や実績を残しているため、さまざまな神格を持った珍しい神様です。
例えば、「因幡の白兎」という有名な神話では、医療の知識でウサギを助けたことから、医療神とされていますし、スクナビコノカミ(少名毘古那神)と葦原中国(あしはらのなかつくに)を造り、自ら治めたことによって、国造りの神ともされています。
また、オオクニヌシは、正妻のスセリビメノミコト(須勢理毘売命)を含めた6人の女神と結婚しており、180人もの子宝に恵まれています。そのため、縁結びの神や子授の神として祀っている神社も多数あります。
オオクニヌシの別称
オオクニヌシは多数の物語に登場することもあって、以下のように多くの別称があります。
- ウツシクニタマノカミ(宇都志国玉神)
- オオモノヌシノカミ(大物主神)
- クニツクリオオナムチノミコト(国作大己貴命)
- アシハラシコオノカミ(葦原色許男神)
- オオナムチノカミ(大穴牟遅神)
- ヤチホコノカミ(八千矛神)
- アメノシタツクラシシオオカミ(所造天下大神)
オオクニヌシは、名前の大国が「だいこく」と読めることから、「だいこく=大黒」として、七福神の大黒天と同一視されることもあります。
しかし、大黒天はインドの神様ですので、まったく別の神様であることを覚えておきましょう。
オオクニヌシの物語
オオクニヌシは、古事記や日本書紀など、多数の物語に登場します。数が多すぎて、すべてを紹介することができませんが、ここでは、古事記でも有名な物語「因幡の白兎」と、オオクニヌシが出雲大社の御祭神となった物語「オオクニヌシの国譲り」を紹介します。
因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)
優しい心を持ったオオクニヌシには、乱暴者で意地悪な80人の兄神がいました。ある日、因幡にヤガミノヒメ(八上比売)という美しい娘がいることを聞いたオオクニヌシと兄神達は、求婚するために因幡に向かいます。
しかし、オオクニヌシは、兄神達に旅の荷物を押しつけられてしまい、大きく遅れてしまいます。兄神達を追って因幡に向かうオオクニヌシですが、その道中の海岸で、サメに毛皮を剥がされて泣いているウサギを見つけます。
ウサギに話を聞くと、先に出会った兄神達に嘘の治療法を教えられ、傷が悪化したと泣きながら訴えるのです。ウサギをかわいそうに思ったオオクニヌシは、正しい治療法を教えてあげました。すると、ウサギの傷がみるみるうちに治ります。
オオクニヌシに感謝したウサギは、「ヤガミノヒメは、兄神達ではなく、あなたを結婚相手に選ぶでしょう。」と言い、その預言通りにヤガミノヒメはオオクニヌシの求婚を受けました。
「因幡の白兎」の話は、損得を考えない優しさを持ったオオクニヌシが、幸せな結末を迎えています。日本には、「徳」を積むことで幸運が訪れるとされる神道の教えがありますが、「因幡の白兎」は、まさにこの教えを説いている話と言えるのではないでしょうか。
オオクニヌシの国譲り
因幡の白兎の物語後、兄神達に2度殺されながらも蘇ったり、スサノオノミコト(素戔嗚尊)に与えられた試練を乗り越えたりと、波瀾万丈の人生を送ることになるオオクニヌシですが、スクナビコノカミ(少名毘古那神)と一緒に葦原中国を造り、治めます。
そんなある日、高天原から使者の天津神(あまつがみ)が降りてきて、葦原中国をアマテラスオオミカミ(天照大御神)の子孫へ譲ってくれるよう頼みます。オオクニヌシは自分の息子・コトシロヌシ(事代主)に交渉するよう断りますが、コトシロヌシはあっさりと国譲りを承諾してしまいます。
そこで、今度は葦原中国を賭けて怪力を誇るオオクニヌシの息子・タケミナカタ(建御名方神)と使者のタケミカヅチ(建御雷神)が力勝負をしますが、こちらもタケミナカタが負けてしまい、オオクニヌシはアマテラスオオミカミの子孫に国を譲ることになります。
結果的に国を譲ることになってしまったオオクニヌシですが、その条件として、「高天原の神々のように、この国に自分が住まう立派な宮殿を建ててほしい。」と高天原の使者に告げます。高天原の使者はそれを承諾し、オオクニヌシが住まうために宮殿を建てました。
その宮殿が出雲大社だと言われています。現在の出雲大社の本殿は高さ約24m。これでも他と比較すると大きな神社ですが、平安時代には高さ48mと現在の2倍はあったという記録も残されています。
また、それより古くは約96mあったという伝承も伝わっています。そして今もなお出雲大社はオオクニヌシを祀る神社としてたくさんの参拝者が訪れます。
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