「天津祝詞」とは?
天津祝詞(あまつのりと)は、神道の祭祀(五穀豊穣や人類の平和・安泰などの祈りやお礼を伝える儀式)において、唱えられる言葉(祝詞)のひとつです。神道の世界では、天津祝詞のことを禊祓詞(みそぎはらえのことば)と呼んでいます。
祝詞の中でも、大祓詞(おおはらえことば)は古い歴史を持ち重要性が高いといわれており、天津祝詞は、この大祓詞に由来しているとされています。
天津祝詞は、大祓詞の中にある言葉の中より、八百万の神様に奏上する祝詞としてふさわしく大切にしたい言葉を選出し再びまとめ直されたものだとされています。
天津祝詞は国学を学び研究した本居宣長の弟子・平田篤胤によってまとめ直された祝詞です。
大祓太詔刀考によると、文化12年4月3日に完成となっています。
文化とは、元号のことで江戸幕府第11代将軍徳川家斉の時代です。
江戸幕府の頃ですから、大祓詞(大祓詞)のように1200年以上も前に作られた祝詞と違い、祝詞の中では比較的新しい詞なのです。
平田篤胤により神代文字をもとに作られた
平田篤胤は、本居宣長の弟子として、また国学四大人の一人として知られた人物です。
国学とは、儒教や仏教が日本に伝来する前に作られたとされる古事記や日本書記などの古典を参考に、日本人の精神論について研究することです。
これは、仏教な様々な宗教の考えが入ってくる前の祖霊信仰のような神道の考え方を表わしており、その頃に使われていたのではないかとされる神代文字を用いて、天津祝詞が作られたとされています。
《神代文字(じんだいもじ・かみよもじ)》
平安時代頃以前(古代)で、まだ漢字が伝わる前に使われていたとされる文字のこと
- 神事に関するご神体や石碑、お札など
- 忍者や江戸時代の藩札によっては、神代文字を暗号や偽造防止を目的
などに使用されていたといわれています。
天津祝詞の原文と読み方・現代語訳とその意味について
天津祝詞は大祓詞に由来しており、出だしは両方とも「高天原に」から始まっていたり同じような詞が用いられたりしています。
そこで、天津祝詞の原文と読み方・現代語訳とその意味について、詳しく解説していきます。
原文と読み方
まず、天津祝詞の原文と読み方を紹介します。
原文 | 読み方 |
高天原爾 神留坐須 | たかあまのはらに かむつまります |
神漏岐 神漏美乃 命以知氐 | かむろき かむろみの みこともちて |
皇親神伊邪那岐乃大神 | すめみおやかむいさなきのおほかみ |
筑紫 日向乃 橘乃 小門乃 阿波岐原爾 | つくし ひむかの たちばなの をどの あはきはらに |
禊祓比給布時爾 生坐世留 祓戸乃大神等 | みそきはらひたまふときに あれませる はらへとのおほかみたち |
諸々禍事罪穢乎 祓閉給比 清米給布登 申須事乃由乎 | もろもろまかことつみけかれを はらへたまひ きよめたまふと まをすことのよしを |
天津神 地津神 八百万神等共爾 | あまつかみ くにつかみ やほよろつのかみたちともに |
聞食世登 畏美畏美母白須 | きこしめせと かしこみかしこみももをす |
現代語訳
続けて、現代訳です。
高天原にいらっしゃる
天皇の祖先であるカムロギの神様、カムロミの神様からお生まれになったイザナギノ大神が
筑紫にある日向の阿波岐原という場所で
イザナギノミコトの禊を祓っている最中に現われたのがお祓いをしてくださる神様たちです
数々の良くない出来事や罪、不浄なものを祓い、清めてくださいとお願いさせていただくことを
天(高天原)にいる神様たちと地にお住まいの神様たち、その他の全ての神様も一緒にお聞きいただけますよう失礼に当たることは重々承知の上で、お伝えさせていただきます。
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