ロザリアロンバルドの保全措置
世界一美しいミイラの少女は、発見され話題になってから、一目見たいと訪れる多くの観光客の前で眠るようになりました。しかし、ロザリアロンバルドの遺体に劣化が見られ、特に顔の変色が目立つようになったのです。
遺体劣化の原因として、観光客の焚くフラッシュ・空気中の酸素・高い湿度が考えられましたが、これ以上の劣化防止を施すためにロザリアロンバルドのお棺を開くことは、不足の事態を招く可能性があります。そのため、お棺の外側をホルマリン漬けにして殺菌をした後、お棺ごと金属製の容器に入れ密封されました。
観光客向けに金属製の容器の上部分はガラスになっていますが、分厚い二重のガラスとなっており紫外線を完全遮断します。更に、その空間湿度をこれまでの80%から65%に変更して、金属容器の中を窒素ガスで満たす保全措置が行われたのです。
謎も残っている
その完璧な姿から、一時は蝋人形説も流れた世界一美しいミイラのロザリアロンバルドですが、まだまだ謎も残っているミイラです。アルフレッド・サラフィアの手稿も見つかり、どのようにしてロザリアロンバルドが美しい姿のままミイラになったのか、解明できたかのように思えますが、現代の科学でもアルフレッド・サラフィアの書き残した措置のみでは、全ての内臓に薬剤を行き渡らすことが難しく、完全に内臓を残すことができません。
しかし、ロザリアロンバルドの遺体には脳は多少萎縮をしてはいるものの、腸や子宮に至るまでの内臓が全て揃っているため、どのようにして彼女は完璧な姿でミイラとなったのか、謎が深まるばかりです。
また、ロザリアロンバルドのお棺は一度も開けられたことがないといわれていますが、1970年代に撮影されたロザリアのお棺と、現在のお棺では内装に違いが生じています。他にも彼女が着用している衣服のシワ・胸に置かれたイコンの金属プレートの向きに変化があるため、誰かが意図的にお棺を開けたことによって、ロザリアロンバルドの遺体の劣化が進んだと考えられるのです。
一度も開けられていないというのであれば、なぜ劣化が早いスピードで進んだのかも、また謎に包まれています。
なぜ同じ様な美しいミイラが存在しないのか?
アルフレッド・サラフィアのエンバーミング技術が確立したものであるのなら、なぜロザリアロンバルドのように、状態の良い美しいミイラが見つからないのか不思議に思う人も少なくありません。それには、ロザリアロンバルドがまだ幼い少女であったこと・死後エンバーミングをすぐに開始したことが大きく関係していると考えられるでしょう。
大人のように体の大きな人は、小さな体の子供に比べると薬剤が隅々に行き渡るまで時間がかかります。更に、ホルマリンで消毒を行うのに、少女であれば小さなタライやバスタブでも可能であり、使用するホルマリンの量も少なくて済みますが、大人はそうはいきません。
また、エンバーミングの処置が死後数時間以内に施されているのも、大きなポイントといえます。死後数時間以内にエンバーミングを施すことは、現代だけでなく当時も違法でした。しかし、その違法といくつかの好条件が重なったが故に、ロザリアロンバルドは死後100年以上の時間を経ても、非常に美しい姿を保っているのです。
ロザリアロンバルドの両親も違法行為と理解した上で、アルフレッド・サラフィアに依頼をしたため、娘のエンバーミングについては硬く口を閉じていたのではないでしょうか。
まとめ
世界一美しいミイラといわれるロザリアロンバルドですが、ミイラになった正確な方法や劣化原因など解明できていない部分が存在します。美しいだけでなく、謎が多い故に人を惹き付けやまないミイラといえるでしょう。古代エジプトから発祥したミイラ作りですが、古代エジプト人の理想の形のミイラは、ロザリアロンバルドのような姿だったのかもしれません。
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