千日回峰行の内容
それでは、千日回峰行のその驚くべき内容について、詳しく解説していきましょう。
7年かけて4万キロを歩く
千日歩くから千日回峰というねんな
修行期間は千日ではすみませんけどね
千日回峰行は、7年かけて1000日間歩き続けるという修行です。
最初の3年間は1日30キロを歩き、定められた比叡山山中の260箇所以上の霊場を参拝して回るという行程を、毎年100日間行じます。次の2年間は、同じく1日30キロを200日間。ここまでの5年間で通算700日の修行を行うことになります。
700日間の修行を終えた後に始まるのが、千日回峰行の中で最大の難関である堂入りです。これを終えることができなければ、次の段階に進むことはできません。
無事に堂入りが終わり6年目に入ると、はじめの5年間の行程にさらに30キロの道のりが加わり、1日約60キロの道のりを100日間行じます。7年目は200日間で、前半の100日間は比叡山山中に加えて京都市内の霊場を巡礼します。その全行程は84キロにも及ぶのだとか。残りの100日間は、はじめに行った比叡山山中の30キロをめぐり、ようやく満行となります。
7年かけて歩く距離は、なんと4万キロ。地球一周分を歩くことになるのです。
白装束と短刀を携えて死を覚悟する
千日回峰行を行う際、頭には未開の蓮華の形を模した笠をかぶり、わらじを履き、白装束をまといます。その姿は生身の不動明王を表したもの、また行を中断するときは自害しなければならないことから、死装束とも言われています。
千日回峰行の行者は、行を半ばにして挫折するときは自ら命を絶つという決意で臨まなければならないのです。そのため、首をくくる死出紐と呼ばれる麻縄と、両刃の短刀、そして埋葬料の10万円を常に持ち歩いています。
ひとたび修行を始めれば途中で投げ出すことは許されず、万が一途中で行を続けられないと判断したときは、携行している短刀で自ら腹を切らなければなりません。
堂入り・四無行
千日回峰行の最初の3年間を終えると、9日間の堂入りに入ります。堂入りとは、比叡山中の明王堂にこもり、9日の間「断食、断水、不眠、不臥(食事をとらない、水を飲まない、睡眠をとらない、横にならない)」の四無行に入るという千日回峰行の中でも最大の難行です。
さらに深夜2時に堂を出て、片道50メートルほど先にある閼伽(あか)井戸で閼伽水を汲み、堂内の不動明王に供えるという動作を毎晩繰り返さなければなりません。それ以外の時間は、不動明王真言を10万回唱え続けます。
先述したように堂入りは不動明王と一体になるための修行で、満行した行者は當行満阿闍梨となり、不動明王の化身として人々から崇められるようになります。
通常、人間が断食・断水で生きられる限界は3日間とされています。このことから考えても、堂入りは信じられないほどの苦行であると言えるでしょう。
千日回峰行を満行すると
堂入りを終えると千日回峰行を満行したと思われがちですが、そうではありません。堂入りの後に残りの2年間を満了して、ようやく千日回峰行を満行したことになるのです。千日回峰行を満行した行者は「北嶺大行満大阿闍梨(ほくれいだいぎょうまんだいあじゃり)」と呼ばれます。
また、1000日間歩き続けると言われていますが実際に歩くのは975日であり、残りの25日は一生をかけて修行しなさいという意味が込められています。千日回峰行を満行して悟りを得るのではなく、生涯をかけて悟りに近づくために行う修行なのです。
生き仏となり、土足で宮中に入れる
千日回峰行を満行した者は生き仏となり、京都御所に土足で参内して加持祈祷を行うことができるようになります。京都御所は本来土足厳禁ですが、千日回峰行の満行者のみ土足参拝を行うことが許されるのです。
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