三面大黒天とは?顔が阿修羅状態の三位一体の大黒様?
三面大黒天とは、顔が3つある大黒天像のことです。
大黒天はインドの破壊と創造・再生・芸術・ヨーガなどを司るシヴァの化神、マハーカーラと同一神であるため、三面大黒天の元はマハーカーラの姿(3つの顔と6つの腕の三面六臂)で描かれることが多くありました。
しかし仏教伝来に際して三身同体(大黒天・毘沙門天・弁財天)の大黒天が誕生し、財運を司る三神が組み合わさることで多大な現世利益があるとされます。
三面大黒天の正面の顔の大黒天について
大黒天には2柱の同一神が存在します。
【シヴァの化神マハーカーラ】
ヒンドゥー教の神様であり、破壊と創造・再生・芸術・ヨーガなどを司っています。日本に密教が伝来した際、大黒天は天部と呼ばれる天界に住む神々の一柱として広まりました。マハーカーラを日本語に翻訳するとマハーが大(または偉大)・カーラが時や黒(暗黒)を意味します。この由来によりインドから日本に伝わってきた際、大黒天の名で広まりました。
【大国主命(オオクニヌシノミコト)】
日本の神様であり、国津神の主宰神(国造りの主要神)です。大黒が大国(だいこく)に通じることから混同されるようになり、神仏習合としての大黒様が誕生しました。
三面大黒天の右側の顔の毘沙門天について
毘沙門天は仏教において武神の四天王に所属しており、そのときの名を多聞天といいます。
【インドでの信仰】
梵語ではヴァイシュラヴァナといい、その意味は「ヴィシュラヴァ(彼の父の名)の息子」です。クベーラという富・財宝を司る神と同一神とみられ、亀やスイレン、ジャスミンをはじめとした9つの財宝を持ちます。このため豪華で裕福なイメージがあり、現在のような戦闘的な姿はほとんどみられませんでした。
【中国での信仰】
中央アジアから伝来する際に武神としての信仰がはじまり、武神であり守護神とされるようになりました。羅刹や夜叉といった鬼神を配下にしているとも伝えられています。
【日本での信仰】
平安時代に中国から伝来して庶民の間で信仰がはじまり、その発祥は京都府にある鞍馬寺でした。福の神として愛され、やがて恵比寿様や大黒天に並ぶ人気を誇るようになり、室町時代末期ごろに七福神の一員とされるようになりました。
三面大黒天の左側の顔の弁財天について
弁財天は技芸上達・財運開運・縁結びなどのご利益がある、ヒンドゥー教発祥の女神様です。
名をサラスヴァティーといい、次のような特徴があります。
- 白い肌の色
- 額の三日月のしるし
- 4本の腕
- お供の白鳥やくじゃく
腕4本のうち3本に数珠・ヴェーダ(宗教文書)・琵琶に似た弦楽器を持っています。
サラスヴァティーはサンスクリット語で「水(湖)を持つもの」の意味があり、水や豊穣を司る神です。元々は水の化神とされていました。日本においての信仰は奈良時代にはすでにはじめっていたとされ、宗像三女神の市杵島姫命(イチキシマヒメ)と同一神とみられています。
三面大黒天のご利益は?武将豊臣秀吉にも愛された勝負事の神様
三面大黒天は勝負事の神様として武将たちにも愛され、中でも豊臣秀吉は信心深かったことが知られています。
豊臣秀吉は農家と兵士を兼業の足軽から太閤まで上り詰めましたが、出自や下積み時代にはかなりの苦難に満ちています。貧しい生まれの上に幼くして父を失い、さらに継父の竹阿弥からの虐待を受け、寺(光明寺)に預けられるなど過酷な幼少期を過ごしています。15歳で亡き父の遺産の一部を手にして家を飛び出し、木綿針の行商で生計を立てていた時期もありました。
そんな豊臣秀吉が三面大黒天と出会った時期やきっかけは明らかではありませんが、豊臣秀吉の奇跡的な出世劇を支えたのは三面大黒天のご利益であると伝えられています。豊臣秀吉の三面大黒天に対する信心深さゆえです。また、京都に圓徳院という三面大黒天を御本尊としている寺院があります。妻ねねの終焉の地となった場所でもあり、秀吉とゆかりのある地です。
三面大黒天のご利益・効果は?
三面大黒天をお参りすると、三面大黒天として寄り集まっている三柱の神様のご利益を一度に受け取れるとされています。
名前 | 真言 | ご利益 |
大黒天 | オン・マカキャラヤ・ソワカ | 五穀豊穣・出世開運・商売繁盛・財運上昇・寿福・円満・開運厄除・子孫繁栄・子授け・縁結び |
毘沙門天 | オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ | 戦勝祈願・鎮護国家・財宝福徳・武道成就・降魔厄除・家内安全・夫婦和合・社運隆昌・厄除開運・勉学成就・方位除災・心願成就・交通安全・商売繁盛・必勝祈願・霊祟除災 |
弁財天 | オン・ソラソバテイエイ・ソワカ | 海上安全・交通安全・豊漁・商売繁盛・知恵・財福・戦勝・恋愛成就・子孫繁栄・子授け・技芸上達・弁舌・長寿延命 |
三面大黒天のご利益を得るためには、参拝と合わせて真言を唱えると良いです。
三面大黒天という最強の仏様と共に歩むということ
三面大黒天はじめ神仏と付き合っていくには、気まぐれではなく情熱のこもった信仰心が必要です。神仏は意志と意欲が強く、信頼し愛してくれる素直な人の支えになってくださいます。参拝し願うだけではなく、進行する神仏と共に歩んでいることを感じてみてください。
武将豊臣秀吉は三面大黒天に本気で惚れ込み、絶対的な信頼を置いて強く信心してきました。そこから大出世の道を歩みましたが、三面大黒天を素直な気持ちで大切にしてきたからともいわれています。
強く信頼することで一度に大黒天・毘沙門天・弁財天のご利益が得られる神様は、日本において三面大黒天だけです。
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