ファロンは、ある時大量の脳のMRI画像から1つの異常な画像を発見します。それは、一般の人の脳画像に比べ、眼孔皮質と偏桃体周辺の働きが著しく低下しているものでした。
この部分の働きが低下すると人は衝動を抑制できなくなり、また他者への共感や良心の呵責といった感情の欠落が見られるようになります。
そして、そのような脳構造の人は極めてサイコパスである可能性が高くなる事が分かっています。
さらに衝撃的であったのは、その画像がファロン自身のものであったことです。また、彼は母親から父方の家系に多くの殺人犯がいた事実を知らされます。
しかし、殺人者や犯罪者の片鱗もなく、家庭も持っている自身が、サイコパスだとは受け入れがたいものでした。そこで、自分自身を研究対象としてサイコパスについてさらに詳しく調べ始めました。
そして、
- 前頭前野皮質眼孔部・側頭葉前部・偏桃体・海馬の機能の著しい低下
- 遺伝子による要因
- 幼少期における身体的・精神的虐待や性的虐待
以上の3つの要因全てが揃うと、サイコパスの可能性が極めて高くなるという結果に行きつきました。
これを「ジェームス・ファロンの三脚スツール」と言います。
そして彼は、自分の脳が反社会的人格者の持つ脳の構造をしていて、遺伝子の要因も持っていたにもかかわらずサイコパスにならなかったのは、③の要因があてはまらなかったからであるとし、自分を社会に適応できる「向社会的サイコパス」と位置付けました。
サイコパスとソシオパスの違い
サイコパスとソシオパスの違いとは
サイコパスと同じく、反社会的パーソナリティー障害に分類されるソシオパスと呼ばれる人も存在する。
多くの人は、サイコパスもソシオパスも同一と解釈していますが、両者には大きく異なる点があります。
サイコパスは脳の働きや構造に障害がある「先天性」で、ソシオパスは子供の頃の環境や虐待などの経験からくる「後天性」であるという点です。
サイコパスとソシオパスは、両者とも反社会的パーソナリティー障害として位置付けられていますが、一方で異なる点も多いため、同一と捉えるのは間違いであると言えます。
では、サイコパスとソシオパスの共通点と違いを見ていきましょう。
サイコパスとソシオパスの共通点
以下は、反社会的パーソナリティーとされるサイコパスとソシオパス両者に共通して見られる特徴です。
- 冷酷で他者の気持ちに共感することがない
- 自尊心が過大で自己中心的
- 嘘をつき、人をうまくコントロールする
- 法やルールを軽視し、罪の意識が低い
次に、サイコパスとソシオパスそれぞれの特徴から、両者の違いを比べてみましょう。
サイコパスの特徴
サイコパスの特徴といえば、一般の人と比べて他者への共感、良心の呵責、恐怖や痛みといった感情を統べ、衝動を抑制する脳の働きが著しく低下していることです。
つまりサイコパスは、他者の気持ちに共感することもなく、人を傷つけても良心の呵責を感じることもなく、ただ自分の利益のためだけに都合のいいように周りの人たちをコントロールする傾向があります。
しかし、サイコパスの中には、人の心を釘付けにする魅力のある人も多く、このような人は社会的に高い位置に就いていたり、組織のリーダーであったりします。
また、普通に家庭を持ち子供がいる人もいます。ただし、そこに愛情はありません。あくまでも自分の社会的地位を確立するためです。
サイコパスは、他者に共感できません。しかし、相手の気持ちを理解できないわけではないのです。
それどころか、相手の気持ちを読んで分析する能力がずば抜けて高く、相手を上手くコントロールしてしまうのです。
サイコパスが犯罪者であった場合、その犯罪を冷静に事細かに計画して行います。そのため、犯人だと分かるまで時間のかかることが多く、その間犯罪が繰り返されることもあります。
また、サイコパスは怒りや憎しみといった感情を持たないため、怨恨による殺人のような罪は犯しません。サイコパスが犯してしまいがちな罪は、快楽や興奮・何らかの目的達成のためだけです。
捕まった後も、被害者に対して罪悪感や懺悔といった気持ちは持ちません。ただ自分の計画が遂行できなかったことを後悔するだけです。
ソシオパスの特徴
ソシオパスの脳の働きや構造は一般的な人と全く変わりません。
幼い頃に身体的・精神的虐待や性的虐待を受け続け、暴力的で劣悪な環境の中で育ったなど幼少期に受けたトラウマが影響して、後天的に反社会的パーソナリティー障害になるといわれています。
自分自身あるいは身近な人が、虐待や暴力を受け続けていた時の痛みや恐怖・苦しみから逃れるために、それらを感じる部分に蓋をしてしまったことが、後に他者への共感や良心の呵責・痛みといった感情を持たない反社会的パーソナリティー障害を生み出すこととなってしまったのです。
ソシオパスも基本的には他者に共感しませんが、自分が心惹かれた相手には必要以上に尽くしたり共感したりします。
ソシオパスは、社会に出て普通の人に交じって生活を送ることは難しく、長期間仕事に就くことも困難とされています。
ソシオパスが罪を犯す時は、計画性やリスクを避けることなど考えず、衝動的な犯行に至ります。そのため、犯行が明るみに出ることが多いです。
このように、同じ反社会的パーソナリティー障害と位置つけられ、同一視されがちな「サイコパス」と「ソシオパス」は明らかに違いがみられます。
そして、生まれ持って他者に対する感情を持たないサイコパスの方が、ソシオパスより危険な存在であると言えます。
サイコパスについてまとめ
サイコパスにはかかわらないのが賢明
サイコパスは、殺人犯や凶悪犯など自分たちの世界とは程遠い世界の人物だと考えていた人が多かったのではないでしょうか。
しかし、サイコパスは普通に社会の中で生活していて、もしかしたら自分のすぐ近くにいるかもしれません。
安易に人のことを判断するのは良くありませんが、もしあなたの身近にいる人がサイコパスの特徴にあてはまったとしたら、もしかしてその人はサイコパスかもしれません。
また、今身近にいなくてもこの先どこかで出会う可能性も全くないとは言えません。それだけサイコパスはあたり前のように社会に溶け込んで存在しているのです。
もしも身近にサイコパスと疑わしい人がいたら、とにかくかかわらないことが賢明です。