韋駄天とは?現在使われている韋駄天の意味
韋駄天とは「足の速い人」のたとえである
小学校のころなどにクラスメートの人気者として、「かけっこの早い人」がいたという記憶を持っている方も多いでしょう。かけっこなどのように走るのが極めて速い人のことを「韋駄天(いだてん)」といいます。ちょうど2019年の大河ドラマのタイトル『いだてん』にも使われていることで有名です。
とはいえ、「韋駄天」という言葉は大河ドラマのタイトルにも使われていることもあって有名ではあるものの、実際にこの言葉を日常的に聞きなれないという方も多いのではないでしょうか?そしてそもそも、なぜこのような難しい書き方をする言葉が「足の速い人」を意味する言葉になっているのでしょうか?
今回は「韋駄天」という言葉について詳しく見ていきましょう。
由来 韋駄天という仏教の神様がいる
「韋駄天」の由来は同じ名前を持つ神様
「韋駄天」という一見難しそうな言葉ですが、実は仏教で同じ名前の神様がルーツです。四天王と呼ばれる仏教を守るための神様の1人である増長天の部下で、仏教関係の神様の中でも俊足を持つ神様として知られています。
そして、「韋駄天=足の速い人」のことになったのは、次の項でご紹介する韋駄天の逸話によるものです。
ポイント
- 「韋駄天」とは、足の速い人のことを指す言葉です。
- 「韋駄天」の由来は、同じ名前を持つ俊足で有名な仏教の神様です。
仏教の神 韋駄天について解説
韋駄天はもともと古代インドのバラモン教の神様
仏教の神様である韋駄天ですが、いったいどのような神様なのでしょうか?
もともと韋駄天はインド古来のバラモン教(ヒンドゥー教の源流になった宗教)の神様スカンダで、破壊神シヴァの次男です。仏教が成立した後は、仏教に登場する神様としても位置づけられるようになりました。その後仏教が中国に伝わった際に「スカンダ」が漢語音訳されて、「韋駄天」という言葉が生まれました。
韋駄天の逸話
韋駄天にはその俊足さを物語る逸話がある
さて韋駄天が「足の速い人」を意味する言葉になった逸話とはどのようなものなのでしょうか?
仏教の開祖はブッダ(お釈迦様)ですが、彼が80歳で入滅した後、そのご遺骨である仏舎利は弟子たちによって分けられることになりました。ところがある鬼がブッダのご遺骨の歯の部分を盗んで逃げたため、これに怒った韋駄天が盗んだ鬼を追いかけて、あっという間に仏舎利を取り返します。
この時韋駄天が追いかけた距離が1280万キロで、それを一瞬で駆け抜けたことが、「極めて足の速い人」のたとえとして「韋駄天」が使われるようになりました。
韋駄天の持つご利益は?
韋駄天は健脚や俊足のご利益もある。
この韋駄天という神様ですが、仏教の神様ということでご利益がいくつかあります。
まず上記の仏舎利を俊足で取り戻したという逸話から、盗難や火事防止のご利益があることで有名です。また韋駄天の俊足さから、足腰が健全で俊足・健脚になるご利益もあります。
さらに曹洞宗や臨済宗など禅宗の場合は、厨房や僧坊といった僧侶の修行生活の場を守ったり、僧侶の修行の邪魔になるものを防ぐなど、仏道修行が円滑に進むというご利益もあるため、修行をしたいという方にはおすすめです。
韋駄天の真言は?
禅宗では決まった日に韋駄天像に真言を唱える
もし仏教の神様のご加護が必要であれば、真言と呼ばれる祈りの言葉を唱えると効果があります。もちろん韋駄天のご加護が必要ということであれば、韋駄天の真言を唱えるのがおすすめです。
韋駄天の真言は「オン イダテイタ モコテイタ ソワカ」となっております。特に曹洞宗では毎月5日にこの真言を唱える「韋駄天諷経(いだてんふぎん)」が修行の一環で行われ、寺院などの守りを祈るのが一般的です。ただし足の速い神様であるだけに、普通のお経よりも速いテンポで唱えることになります。
韋駄天が祀られている寺
京都の泉涌寺舎利殿は韋駄天を祀ってあるところとして有名
神道の神様やほかの仏教の神様と同じように、韋駄天も祀られている寺院が実際に存在します。代表的な寺院として、京都府京都市東山区にある泉涌寺(せんにゅうじ)舎利殿(京都市東山区)や宇治市の万福寺、岐阜県岐阜市の乙津(おっしん)寺が挙げられます。
特に泉涌寺舎利殿には、仏陀の歯の骨が祀られているという点でも、韋駄天の逸話を物語っている場所です。
ポイント
- 韋駄天が鬼を追いかけて、仏陀のご遺骨を取り戻したことが俊足さを物語っています。
- 韋駄天のご利益に盗難防止や俊足・健脚などがあります。
- 韋駄天の真言は「オン イダテイタ モコテイタ ソワカ」です。
- 韋駄天が祀ってある寺院に、京都の泉涌寺舎利殿などがあります。
韋駄天とごちそうさまでしたの関係
実は韋駄天という神様はもう1つ、私たちが日ごろ使っている言葉の語源となっていることでも有名です。その言葉とは食事が終わった後に言う「ご馳走さまでした」で、よく見ると「馳せる」や「走る」の字が使われています。2つの漢字とも、「ごちそうさまでした」の語源と深いつながりがあります。
というのは、この言葉も韋駄天がブッダのためにあちこちを駆け回って料理をもてなしたという逸話があるためです。そこで韋駄天が料理を求めてあちこちを走り回るさまから「馳走」という言葉ができ、それを丁寧に言い換えて「ごちそうさま」となりました。
ポイント
- 韋駄天の逸話が由来にある言葉に「ごちそうさまでした」もあります。
- 仏陀の食事のために韋駄天があちこちを駆けずり回ったことが由来です。
韋駄天とは まとめ
今回は、2019年大河ドラマのタイトルでも知られている韋駄天についていろいろと見てきました。普段は足の速い人のたとえとして使われていますが、もともとは仏陀のご遺骨を鬼から取り返した、俊足の神様の名前から来ています。神様としての韋駄天には、盗難や火事防止、足腰の健康、僧侶の修行生活にまつわるご利益で有名です。なお韋駄天を祀ったお寺として、京都市にある泉涌寺舎利殿などがあります。
また韋駄天は、「ご馳走様でした」という言葉とも深いかかわりがあります。以上のように私たちの生活とも意外と深い関係があるため、韋駄天は割と私たちにとって身近といえるのではないでしょうか。
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