大黒天/大黒様とは?
大黒様はインドの創造・破壊・再生・芸術・ヨーガなどの神でシヴァ神の化神であるマハーカーラと同一神です。仏教伝来とともに日本に入ってきました。さらに日本の神様である大国主神と同一神という言い伝えもあります。そのような七福神の一員である大黒様や大黒天という名で呼ばれて親しまれている神様についてご紹介します。
どんな神様か
大黒様は現在は財宝や開運などを司る神として有名ですが、元々は軍神・戦闘神・富貴爵禄の神として伝わりました。仏教伝来の際に中国にて富貴爵禄の部分を強調して祀ったことがきっかけとなり、日本でも財宝や開運の神として広まりました。
大国主(大黒様)とシヴァ神(大黒天)
大国主神とシヴァ神は大黒様または大黒天の同一神とされています。
しかし、なぜ大黒様と大黒天の2通りの呼び方があるのでしょうか。それにもきちんと意味があります。
日本では明治元年(1868年)に王政復古や祭政一致という考えを実現させたいという藩の望みのもと、神仏分離令が発されました。これにより神社では大黒様と、寺院では大黒天と呼ぶようになったのです。
大国主
大国主神(オオクニヌシノカミ)は日本の神道に基づく神様ですので、大黒様と呼びます。
シヴァ神
シヴァ神はマハーカーラを化神にもつヒンドゥー教の神様で、インド密教やチベット仏教に関わりがあるため、大黒天と呼びます。さらに日本に密教が伝来した際、大黒天は天部と呼ばれる天界に住む神々の一神として広まりました。
大黒様/大黒天は七福神の一人
大黒様は七福神と呼ばれる福をもたらすとされて日本で信仰される七神の神様のグループの一員です。
大黒様の特徴は頭に頭巾、足元に二つの米俵、右手に小槌を持っています。
また、二神一緒に祀られることもある恵比寿様との関係は親子であるという説もあり、大黒様が父の大国主神であり、恵比寿様が子の事代主神です。このため二神が並ぶ際には上座と下座の決まりが守られています。
大黒様/大黒天のご利益
主なご利益
主に金運や財運面を司る神様というイメージの強い大黒様は、下記のようなご利益があります。
- 商売繁盛
- 富貴栄達
- 五穀豊穣
- 夫婦和合
- 縁結び
- 立身出世
- 医薬
このように金銭面だけではなく、七福神の一員であるということもあり、人々の日常生活に至るご利益が得られます。
伝承・逸話
大黒様には次のような伝承・逸話があります。
大黒様には二神の同一神とされる存在があり、一神は国づくりの神である大国主神で、もう一神はインドの創造・破壊・再生・芸術・ヨーガなどの神であるシヴァ神の化神、マハーカーラです。
マハーカーラを日本語に翻訳するとマハーが大(または偉大)・カーラが時や黒(暗黒)を意味します。そのためインドから日本に伝来した際に大黒天として広まったとされます。
さらに神仏習合の過程で日本の神道と仏教が融合した際に「大黒」が大国に聞こえることから大国主神と同一神とされ、破壊神・豊穣神として広まりました。しかし、現在の大黒様は金銭面や縁結びなど人々の生活に関する幸福を司る神として大切にされています。
大黒様/大黒天の真言
- 「おん まかきゃろや そわか」
- 「おん まかきゃらや そわか」
大黒様の日について
大黒様の日とは、暦の中の「甲子(きのえね)」の日を指します。暦は一日ごとに六十干支という60種で成り立つ干支がひとつずつ割り振られています。
発祥は干支の思想のある中国で、大黒様のお使いは子(ねずみ)であるという説から生まれました。そもそも古代中国ではねずみは災害前に一家揃って安全な場所へと移動するため、未来予知能力があると考えられおり、さらには家ねずみは霊獣であり、家の守り神だと言い伝えられてきました。
そして中国から大黒天の祭祀とともにねずみ信仰が伝わった際に、元々古事記にねずみが大国主神を救う話もあったため、自然な流れで浸透していきました。古事記の内容はスサノオが大国主神の能力を試そうとして野原へ呼び出し、火を放ったというものです。逃げ場をなくして焦る大国主神の元に一匹のねずみが現れ、この下に穴があることを教えてくれました。
大国主神はその穴に入って火が消えゆくまで待ち、助かったのです。大黒様や大黒天を祀る神社や寺院では、この日に祭事を行います。
三面大黒天とは?
三面大黒天とは顔が3つある大黒天像のことです。
元々シヴァ神の化神であるマハーカーラは3つの顔と6つの腕を持つ、三面六臂の姿で描かれることが多くありました。
仏教とともにこれが日本に伝わってきた際、独自の進化を遂げました。その内容は大黒天を中心とした、同じ七福神のメンバーである毘沙門天と弁財天の計三神が合体した日本風三面大黒天の姿です。日本で初めてこの三面大黒天をつくって祀ったのは日本天台宗の開祖である最澄とされおり、財を司る神の三神が合体したことにより、最高のご利益があると考えられています。
三面大黒天を含め大黒様の置物を設置してお祀りする場合には、きちんとした祀り方が存在します。荒魂や障礙神としての性格もお持ちでいるため、祀り方をしっかり理解できる場合のみお祀りしましょう。きちんとお祀りする場合には開眼供養が必要です。それ以外ではあくまでもオブジェとして飾ることがよいです。オブジェとして飾る場合にも、次の点に気をつけましょう。
【祀り方の例】
- 南向きや東向きであること
- 明るくきれいなところであること
- 大人の目線より高いところであること(大黒様を見下ろさないようにする)
- 直接置いてはならず、半紙を敷くこと
- 人が頻繁に通らない場所であること
大黒様/大黒天を祀る神社
大黒様を祀る神社や寺院で有名な3か所をご紹介します。
前述した通り神社での呼び方は大黒様(大国主神・少彦名命)で、寺院では大黒天です。
出雲大社(島根)
出雲大社は島根県出雲市にあり、縁結びのご利益があるとされて有名です。ご祭神は大国主大神様です。大国主大神様が国づくりによって「豊葦原の瑞穂国」を築かれた後、天照大御神様へと国譲りされました。その際に国づくりの大業をおよろこびになったことと同時に、人々の見える世界を私の子孫があたるとし、あなたは目に見えない世界を司って幸福を導いてくださいと申したとされます。
その際にお住まいとして与えられたのがこの出雲大社でした。
神田明神(東京)
神田明神は東京都千代田区にあり、商売繁盛のご利益があるとされて有名です。ご祭神は大己貴命で、大国主大神様の別名です。さらに国づくりの際に大己貴命を支えた少彦名命もお祀りされていますが、この神社では恵比寿様と同一神とされています。
神田明神の大己貴命は主に国土開発や繁殖・医薬・医療に強いご利益があるとされ、さらには夫婦和合・縁結び・国土経営の神様としても大切にされています。
大国主神社(大阪)
大国主神社は大阪市浪速区の敷津松之宮の摂社として境内にあり、種銭(たねせん)と呼ばれるお守りが有名です。1744年2月の神託を以て、出雲大社の分け御霊として建設されました。甲子の日にはよく賑わい、大阪七福神めぐりのうちの一社にもなっています。
さらに大阪市西成区には末社である敷津松之宮西成旅所も存在しています。
【七福神】大黒様/大黒天とは?まとめ
- 大黒様とは商売繁盛・富貴栄達・五穀豊穣・夫婦和合などを司る神様である。
- 神社では大黒様、寺院では大黒天と呼ばれる。
- 大黒天にはシヴァ神の化神であるマハーカーラと大国主神という同一神がいる。