逆柱とは?
逆柱(さかばしら、さかさばしら)とは、木造建築において本来樹木が生える方向とは逆におかれた柱のことです。
通常建築で柱を使うときは、木が生えている方向と同じ向きにします。しかし逆柱では木の天地が逆さになっています。
逆柱の意味
逆柱には二つの意味があります。
①ポルターガイスト現象などを引き起こす不吉なもの
②魔除け・「建物は完成と同時に崩壊が始まる」ことを避けるもの
もともとは①の意味で捉えられていました。古来より逆柱は、突然家が軋んだりガタガタ音がたったりなどの家鳴りを起こすと言われてきました。逆柱自体が妖怪となるときもあれば、逆柱が家を鳴らす妖怪を引き寄せるときもあると考えられていたようです。家鳴りは、今でいうポルタ―ガイスト現象です。直接手を触れていないのに物が揺れたり落ちたりするのは逆柱の仕業と恐れられていました。
その一方で、「建物は完成と同時に崩壊が始まる」という伝承を逆手に取ることで、敢えて逆柱にしてその建物が「未完成の状態を保つ」(そのため災いは起こらない)とし、逆柱を魔除けとする建物も出てきます。
逆柱は不吉?
逆柱が不吉とされるのは、家鳴りというポルターガイスト現象を引き起こすため、ひいては家の運気低迷や不幸を招くと考えられていたからです。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』や井原西鶴の『西鶴織留』など、逆柱をモチーフとした妖怪の図や、怪談が執筆されたのも俗信に拍車をかけました。
明治時代の日本民俗学者・小泉八雲は『化け物の歌』のなかで「さかばしら 何の工(たくみ)みのしわざなるらん」と記し、大工の不注意もしくは悪意をもって逆さに柱をおいたのでは、いずれにしても良くないとしています。
現代では家鳴りは、逆柱が強度に弱く湿気や温度の影響を受けて軋む現象だとされて、木造建築の際には逆柱にならないように留意しています。また、建築の現場における厘場(りんば)という材木置き場は敢えて逆柱で建てて、材木の乾燥をスムーズにしているとのことです。
一方で、災いを防ぐために敢えて逆柱にした建物もあります。日光東照宮の陽明門の逆柱がその代表例です。
日光東照宮・陽明門の逆柱にこめられた意味について
栃木県日光市にある日光東照宮の陽明門には「魔除けの逆柱」と呼ばれる柱があります。
陽明門にある12本の柱の内、西から2本目の柱が逆柱で施されているグリ紋様も逆さに彫られていることで有名です。陽明門のこの逆柱は、
- ことわざ:「満つれば欠くる世の習い」・・・満月が欠けて三日月になるように、物事は栄華を極めた後にはただ衰退するのが世の中の道理である ⇒ 建物は完成と同時に崩壊が始まる
という伝承を逆手にとり敢えて柱を逆さにすることで、「未完成の建物であるから災いを招かない」としています。つまり、逆柱は魔除けとして取り入れられたということです。
これは「瓦三枚を残す」建築方法と同じ考えといえます。敢えて瓦を置きっぱなしにすることで「この建物は未完成であるから、いつまでも衰退することはない」という願掛けとなっています。